駐在事務所の女性弁護士さんに強く勧められて、事務所近くの小さな映画館で「RBG」という映画を観ました。Ruth Bader Ginsburgという、米国最高裁の女性判事の半生を描いたドキュメント映画です。映画の大半は、彼女自身や彼女と関わりのあった人々のインタビューです。
彼女は御年85歳にして現役の判事です。大きめの縁の太いめがねと、法廷で黒いガウンの上からつけているレースの襟がトレードマークになっています。
私はこの映画を観るまで、判事の中におばあさんがいるなくらいにしか認識していませんでした(大変失礼!)。しかしこの映画を観て、9人いる判事の中でも、彼女の存在には特に重要な意味があるということが分かりました。
映画は重くなく、時々コミカルに描かれ、たまにほろりとさせます。
彼女はDissenterとして名が知られています。Dissentというのは、最高裁の判決(多数決)に対して反対意見を述べることです。彼女は毎度のように少数派となり、反対意見を発表してきました。Notorious RBGとさえ呼ばれているようです。Notoriousは、通常あまりいい意味では使われないらしいですが、彼女の場合にはなんとなく親しみをもって呼ばれているようにも見えます。
RBGはアメリカでの女性弁護士の先陣でした。彼女が学生当時のロースクールには女性が極めて少なく、彼女がロースクールを出てから就職先を探す際、どこの法律事務所に行っても、「女だから」という理由で採用を断られたといいます。アメリカは男女平等の意識が進んでいる国の1つというイメージでしたが、そんな差別の時代が割と最近まであったことに驚きました。
いつも反対意見を述べるというのは、もちろんその意見自体には反対する人も賛成する人もいるでしょうが、臆さないその姿勢自体はアメリカの人々に好意的に受け取られているようでした(少なくとも映画ではそう描かれていました。)。女性の人権について多く戦ってきた彼女の功績を知る人達、特に女性達には、カリスマ的に崇められており、現在ロースクールに通う女子学生達が目を輝かせてRBGの偉大さについて語るインタビュー風景が映画に収められていました。自分がもしアメリカのロースクールに通っていたら、RBGのポスターを壁に貼っていたことでしょう。
ネットで彼女の名前を画像検索すると、実際の写真に混ざって、様々なコラ画像も出てきます。名前に”dissent”と付け加えると、よりコラ画像割合が増えます笑。「やってやれ!」「またRuthがDissentしてるぞ!」「いいぞいいぞ!」という声が聞こえてきそうです(私の想像です。)。映画では、彼女の顔のイラストに”Dissent”という文字をあしらったTシャツやマグカップなどのポップなデザインのRBGグッズが紹介されていました。どこで買えるのか知りたいです。テレビのバラエティには彼女のモノマネコメディアンまで登場します。何となく黒柳徹子さんを連想しました。とあるアメリカの小学校のヒーローコスプレパーティーで、皆がマーベル映画の主人公やらアニメの主人公やらのコスプレをしている中で、大きなめがねをかけて髪をひっつめにし、黒いガウンに白いレースの襟をつけてRBGになりきった少女が話題になったそうです。この子は将来が期待できると思います。ワンダーウーマンの顔だけがRBGに加工された画像がスクリーンに登場した際には、女性の観客達が歓声を上げていました。
現役最高裁判事がアイコン化したことは興味深いし、いい風潮だと思います。日本で裁判官のコスプレやものまねをして、その人と分かる人が何人いるでしょうか。
近年では9人の判事の中で保守派がより多くを占め、リベラル派である彼女の意見は、より少数派となりやすくなっています。彼女はまだまだ引退する気がありません。これからは彼女のDissent opinionにも注目して最高裁判決を読みたいと思います。
自分の英語力不足により、周りの人達が声を上げて笑っている理由が分からなかった箇所がいくつもあったので、英語の復習も兼ねて、また観たいと思います。
映画館にあった顔ハメ(メガネは自前です)。HERO. ICON. DISSENTER.